なぜIT導入の前に業務整理が行われないのか?

新しいシステムを導入したものの、思ったほど業務が効率化されない。
あるいは、カスタマイズを重ねた結果、システムの構造が複雑になり、変更すること自体が難しくなってしまった。
こうした状況は、決して珍しいものではありません。
多くの企業で同じような問題が起きています。
IT導入は本来、業務改善や生産性向上を目的として行われるものです。
しかし実際には、導入したシステムが十分に活用されないまま運用されているケースも少なくありません。
その背景には、IT導入の前に本来行われるべき「業務整理」が十分に行われていないという問題があります。
本来であれば、業務の流れを整理し、どの部分をITで支援するのかを検討したうえでシステム導入を進めるのが自然な順序です。
しかし実際には、このプロセスが省略されたままIT導入が進んでしまうことも多くあります。
なぜIT導入の前に業務整理が行われないのでしょうか。
IT導入はどのように進むのか
多くの企業におけるIT導入は、次のような構造で進みます。
企業が新しいシステムを導入しようとするとき、まずITベンダーやSIerに相談するケースが一般的です。
企業側はITの専門家ではないため、システムの選定や導入方法について外部の専門家に助言を求めるのは自然なことです。
SIerは、企業の要望をヒアリングし、それを実現するためのシステム構築を行います。
一方、ソフトウェアベンダーは自社製品の機能や特徴を説明し、その製品で実現できることを提案します。
つまり、IT導入は大まかに
企業(顧客) → SIer → ソフトウェアベンダー
という関係の中で進みます。
この構造自体が間違っているわけではありません。
それぞれが自分の専門領域の役割を果たしているだけです。
しかし、この構造の中では、業務整理というフェーズが十分に行われないままIT導入が進むことがあります。

業務整理が行われない理由
では、なぜ業務整理が行われないのでしょうか。
その背景には、IT導入に関わるそれぞれの立場があります。
まず、企業側はITの専門家ではありません。
そのため、システム導入を検討する段階では、例えば次のような相談から始まることが多くなります。
「この業務をシステム化したい」
「今の業務を新しいシステムに置き換えたい」
一方、SIerの役割は、顧客の要望を実現するシステムを構築することです。
契約の多くは「要件を満たすシステムを構築すること」であり、業務そのものを再設計することまでは求められない場合も少なくありません。
システム開発のプロジェクトに関わっていた際、この構造を何度も目にしてきました。
SIerの仕事は、基本的には顧客の要望をシステムとして実現することです。
そのため、要望の背景について簡単に確認することはあっても、業務そのものを深く掘り下げて整理するところまでは踏み込まないことが多くありました。
実際の現場では、
「こういう機能が欲しい」
「この業務をシステム化したい」
といった要望をもとに開発が進んでいきます。
しかし、システムがリリースされたあとに
「実はこういう使い方をしたかった」
「このケースでは思ったように動かない」
といった問い合わせが来ることもありました。
SIerとしては、その使い方は要件として聞いていないため、システムに組み込まれていないのは当然です。
対応する場合は追加開発として工数が必要になります。
また、ソフトウェアベンダーとのやり取りでも似たような構造があります。
製品について相談すると、基本的には
「この製品でできるのはここまでです」
「それ以外のことはできません」
という形になります。
これも当然のことです。
ソフトウェアベンダーは製品の専門家であり、企業の業務全体を再設計する立場ではないからです。
つまり、SIerもソフトウェアベンダーも、それぞれ自分の役割の範囲で仕事をしているだけです。
そのため、業務そのものを整理・再設計する役割は誰にも明確に与えられていないという状況が生まれます。
その結果、IT導入はどうなるのか
業務整理が十分に行われないままシステム導入が進むと、いくつかの問題が起こりやすくなります。
例えば、既存の業務をそのままシステムで再現しようとすると、多くのカスタマイズが必要になることがあります。
最初は小さな調整だったとしても、それが積み重なることでシステムの構造は徐々に複雑になっていきます。
さらに、業務の変化や新しい要件が発生したとき、その変更がシステム全体に影響することもあります。
結果として、システムを修正するたびに大きな工数が必要になる状況が生まれることもあります。
また、現場の業務に十分に合っていない場合、システムが使われず、結局Excelや別のツールで業務が行われることもあります。
こうした状況は決して珍しいものではありません。
本来、ITは業務をそのまま再現するためのものではありません。
整理された業務を支える仕組みとして設計されるべきものです。
だからこそ、業務整理が行われないまま進むIT導入は、後から無理が生じやすくなるのです。
本来あるべきIT導入の順序
本来、IT導入は次のような順序で考えるのが自然です。
業務整理 → 業務再設計 → IT導入
まず現在の業務の流れを整理し、どこに課題があるのかを把握する。
そのうえで、業務の進め方そのものを見直し、より効率的な形に再設計する。
ITは、その業務を支えるための手段として導入されるべきものです。つまり、IT導入は業務の代わりに考えるものではなく、業務構造を整理した結果として選ばれるものなのです。
IT導入の前に考えるべきこと
もちろん、業務再設計は簡単な取り組みではありません。
組織や既存システム、業務慣習など様々な制約の中で進める必要があります。
しかし、それでもなお、IT導入の前に業務を見直すことには大きな意味があります。
ITは単なるツールではなく、企業の業務を支える仕組みです。
だからこそ、IT導入を検討するときこそ、まずは業務そのものに目を向けてみることが重要なのではないでしょうか。
今回の記事では、なぜIT導入の前に業務整理が行われないのか、その背景にある構造について整理しました。
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