本当にそのカスタマイズって必要?システムカスタマイズをおすすめしない理由

「この業務に合わせて、システムをもっとこう変えられませんか?」
システム導入の現場でよく聞かれる言葉です。
特に日本企業は、「業務にシステムを合わせる文化」が根強く、結果としてカスタマイズを多用する傾向があります。もちろん、カスタマイズ自体は悪ではありません。しかし、すべての業務にシステムを合わせようとすると、結果的に「何がしたかったんだっけ?」という状態に陥ることも。
今回は、「本当にそのカスタマイズって必要?」という視点から、システム導入のあり方を考えていきます。
カスタマイズは悪か?―必要なのは“選択”
まず大前提として、システムカスタマイズ自体は悪ではありません。
特に、コアコンピタンス(競争優位性の源泉)に直結する業務は、むしろシステムを自社仕様に合わせるべきです。
例えば、Amazonが物流システムをカスタマイズせずにパッケージのまま使うでしょうか?絶対にないですよね。コア業務だからこそ、そこは徹底的に作り込むわけです。
しかし、日本企業の多くは、コアコンピタンス以外の業務にもシステムを合わせようとする傾向があります。
例えば…
- 経費精算フローの細かな社内ルールのために高額なカスタマイズを依頼
- 勤怠管理の打刻ルールを複雑にしてシステム改修
- ワークフローに細かい承認フローを組み込みすぎて、逆に使いづらくなる
これらは本当に「業務を守る」ためのカスタマイズでしょうか?それとも、単なる“現状維持バイアス”でしょうか?
業務にシステムを合わせる文化の背景
なぜ日本企業はここまで「業務にシステムを合わせる」のでしょうか?背景にはこんな理由があります。
この結果、業務自体がシステムに最適化されず、逆にシステムが業務に振り回される構造が生まれます。
実際にこのような例があります。
とある企業での実例です。
ワークフローシステムを活用し、紙で行っていた申請業務の電子化を進めることになりました。システム自体はすでに導入済みで、焦点は「どう活用するか?」でした。
しかし、顧客の要望は「既存の紙の申請業務を、そのままシステムに再現してほしい」というもの。
ただ、システムには制約があり、すべてをそのまま再現するのは難しい。
さらに、仮に再現できたとしても、それは根本的な業務改善にはならないのです。
結果として、その企業では「システム仕様に業務を合わせる形」で電子化を実施しました。
その結果…
と、むしろ業務効率が大きく向上する形に。
「システムに合わせる」ことで、よりシンプルで効果的な業務運用が実現できたのです。
カスタマイズの罠―本当に怖いのは「保守コスト」
さらに問題なのは、カスタマイズ後にやってくる影響です。
💸 開発費用が高騰する
→当然ですが、カスタマイズは高額になります。しかも、費用対効果は曖昧なことが多いです。
🔧 保守・改修コストが増大する
→独自カスタマイズ部分は、標準アップデートの際に互換性が壊れる可能性が高く、都度、追加開発や調整費用が発生します。
⛔ 運用の属人化
→「うちのシステムは特殊だから」と特定の担当者しか扱えなくなる状態に陥り、運用が硬直化します。
その結果、「結局、次のシステムもまたカスタマイズ前提…」という負のループに。
特に中小企業は“業務をシステムに合わせる”意識を
特に中小企業は、予算や人員が限られているからこそ、カスタマイズよりも、標準機能の最大活用を考えるべきです。
たとえば、
- 経費精算フローはシステムの標準ワークフローに合わせる
- 勤怠管理はルールを簡略化して既製のシステムに合わせる
- 顧客管理はCRMの標準機能を活用する
これだけで、導入費用も保守費用も圧倒的に抑えられます。
さらに、業務プロセスの見直しができるため、結果的に全体の業務効率が上がることが多いです。
アメリカのIT文化との違い―「カスタマイズ」の意味合いが違う
アメリカもコア業務には莫大な予算を投じてITを内製・カスタマイズしていますが、実はコア業務以外は徹底して標準化しています。
例えば、Amazonは社内の人事管理や経費精算は市販のシステムをそのまま使うことが多い。なぜなら、「そこは競争優位性に直結しない」と考えているからです。
一方、日本は「ここも合わせよう」「あそこも例外対応しよう」と、コア業務以外にも労力とコストをかけがち。
しかし、その結果、本当に強化すべきコア業務への投資が薄くなるのは本末転倒です。
中小企業こそ「業務をシステムに合わせる」文化を
最後に、カスタマイズを検討する際は、ぜひこの問いを持ってください。
限られたリソースを、より効果のある部分に集中するために、業務プロセスを見直し、標準機能を最大限活用する。
それが、IT導入の効果を最大化する近道です。
今回の記事では、システム導入のあり方についてお話いたしました。
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