コストをかけて導入したのに“使われないIT”になってしまうのはなぜ?

多くの企業が業務効率化を目指してITツールに多額のコストをかけています。しかし、導入後に使われず、結局“宝の持ち腐れ”になってしまうケースが後を絶ちません。
同じような経験はありませんか。
“使われないIT”になってしまう原因を探ってみましょう。
そもそも、なぜ使われないのか。
そもそも使われなくなってしまう原因としては以下が挙げられます。
- 実務とシステムがフィットしていない
- 導入時に現場の業務を行う社員へのヒアリングが不足している
- システムの詳しい使い方がわからない
- 導入教育やトレーニングが不十分
とある大企業勤めの友人から聞いた話です。
「〇〇ってシステムはほんとに使い物にならない」
「やりたいことできないし、使いづらい」
この話を聞いた時に、それほどの大企業でも“使われないIT”が当たり前のように発生してしまうことに驚きました。
さらに驚いたのは、そのシステムは、世界的に多くのシェアを誇る製品だった点です。そんな製品が使い物にならない訳がありません。
この話からわかることは、どんなに品質の高い製品でも、現場で使う社員へのヒアリングが不足し、正しく活用されなければ、現場では“使われないIT”となってしまうということです。
当の友人には、「それは導入を決定した人が悪い。製品は悪くない」と、私には何にも関係ありませんが、一応製品の面目は守っておきました。友人はそれでも「〇〇が悪い」としか言ってませんでしたが。
でも、これが現実です。ITを使う側は、製品が悪い、と言いたくなるのでしょう。
導入プロセスに潜む落とし穴
次はITツールを導入する際のプロセスに着目してみましょう。導入プロセスでは、以下の課題が挙げられます。
課題①:目的が曖昧
「何のためにITを導入するのか」
「どんな課題を解決するために導入するのか」
この目的意識がないままIT導入進める。つまり、何となく良さそうだから導入する、ということをしてしまうと、導入自体が目的になってしまい、思ったような効果が得られない可能性が高いです。
課題②:経営層と現場のギャップ
経営層は、コスト削減や業務効率化を目指し、IT導入やDX導入に積極的かもしれません。
一方、現場では、「新たに業務が増えた」「今までのやり方がいい」などという声が上がったりもします。
そうなると、“使われないIT”となってしまうのも不思議ではありません。
経営層と現場とで、コスト削減に対しての熱量や意識の違いがあるのかもしれません。
課題③:カスタマイズ過多
業務に合わせる形でシステムを独自カスタマイズすることもあるでしょう。
最初のうちはいいですが、新たな業務が増えたり、業務プロセスの変化が発生する度に独自カスタマイズを加えると、システム自体がかなり複雑化します。
複雑化した際に、メンテナンスできる体制が不十分だったり、複雑化しすぎて収集がつかなくなったりすると、“使われないIT”になり得ます。
心理的・文化的な要因
現場社員の心理的な要因や会社の文化や慣習的な要因もあるでしょう。
・現場社員の心理的抵抗
変わることには労力が必要です。慣れている業務の進め方がたとえ非効率であろうと、慣れているからそのままがいいという心理が働きます。
ましてや、ITに苦手意識を持つ社員は、せっかく既存のITに慣れて、進め方を確立していたにも関わらず、「新たに覚えることが増えるんじゃないか」「ITの使い方がわからず業務が滞るんじゃないか」という不安が生じ、新たなITの導入に抵抗感を抱くことは容易に想像できます。
・会社の文化や慣習
会社の文化や慣習が業務プロセスに大きく影響することもあるでしょう。
「社内の多くの承認者から承認を受けないと稟議が通らない」
「非効率と誰もが感じていても、昔からの慣習で業務プロセスを一切変更できない」
「アナログのやり方を意地でも突き通す社内文化」
会社の文化や慣習、となると、そもそもなぜITを導入したのか、となりそうです。が、効率化やコスト削減を求める部門が推進してITを導入を行うものの、文化や慣習を守る意識が強い部門には受け入れられない、なんてことも十分あり得る話です。
“使われるIT”にするためには
では、コストをかけて導入したITが陳腐化しない、“使われるIT”にするにはどうすればいいのでしょうか。
対策①:まずは課題を明確に。ITは課題解決の手段として捉える
課題の部分でもお伝えしましたが、IT導入が目的化してしまうのは禁物です。まずは、現状分析で課題を洗い出し、その課題を解消する方法を考える。その課題の解決策の一つとしてIT導入があります。
ITに頼らなくても、少しアプローチを変えれば、課題解消できることは少なくありません。まずはどういうアプローチで課題解消すればいいのかを十分に検討しましょう。その検討を行った上で、さらなる改善を求めるのであれば、そこで初めてIT導入という選択肢が出てきます。
ITは課題解決の手段の一つとして捉えましょう。
対策②:実際に使う現場の社員へのヒアリングを徹底
業務に即したITを導入する必要があります。そのためには、導入を推進する部門が現場の業務を理解する必要があります。現場へのヒアリングは、現場の協力を得る必要があるので、労力も時間もかかります。ただ、IT導入する上ではそれを避けては通れません。
「現状の課題は何なのか」
これは現場社員が日常で感じていることにヒントが隠されていることが多いです。現場視点でないと気付けないことは多くあります。普段感じていても表面化しないことは十分にあり得ます。
現場視点でも、経営視点でも、双方の視点で現状分析を行うことがIT導入の効果を最大化するための近道になります。
対策③:システムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせる
今までのやり方を変えたくないという心理が働くため、多くの企業は業務プロセスや業務フローを変えずにシステムをカスタマイズしていきます。でも、それは本当の意味で課題解消しているかというと、疑問符が付きます。
なぜなら、その業務プロセスや業務フローそのものが根深い課題となっていることがあるからです。そこに目を背けたままでは本当の意味での課題解消は不可能でしょう。
また、システムのカスタマイズは、カスタマイズしたその瞬間から、そのシステムを維持・運用・管理するために多くのコストが発生することが決まってしまいます。そのカスタマイズに依存せざるを得なくなる可能性が高いです。
外部要因によって、機能追加や機能改修が必要な場合もあるでしょう。どんどんシステムが複雑化し、思わぬ箇所に歪みが発生し、収集がつかなくなる、なんてケースはざらにあります。
もちろん、この業務プロセスが自社の差別化の一つなんだ、コアコンピタンスなんだ、という場合は、カスタマイズは必要になるでしょう。ただ、その場合でも必要最低限にすることをおすすめします。
対策④:導入教育やトレーニングを実施
「このITを導入します。使い方はこのマニュアルを見てください」
で社内への展開を済ませてませんか。これでは現場からの反発が発生し、“使われないIT”になることは当然の結果でしょう。
社内説明会を複数回実施したり、質問会を設けたり、質問専用の社内窓口を設けたり、活用方法やTipsをまとめたものを社内発信したり。とにかく現場社員に使い慣れてもらうためのアプローチを行うべきです。
しっかりヒアリングをして、現状分析を行った上で、導入時にもしっかりサポートをすることで、現場社員の心理的要因を緩和することが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自社に当てはまるような部分があったのではないのでしょうか。
ITへの投資は、今後より一層避けられなくなってきます。
そんな中で、導入した効果がしっかり得られなければ、経営にも影響が出てきます。
世間では様々なITサービス、IT製品が存在します。魅力的なキャッチコピーや広告等、一昔前よりも高度になってきています。
また、AIで〇〇を解決、といった最新のITを用いた素晴らしい製品も数多く存在し、何かそれらを導入したら、自社の課題が解決するんじゃないかと思ってしまいます。
が、何にも考えなしに導入することは危険です。
ITは目的ではなく、課題解決するための手段の一つです。
耳障りの良いものに惹かれるのは仕方ないことですが、そこで立ち止まって、自社に本当に必要なものかをしっかり見極め、ITを選定しましょう。
それがIT導入の投資対効果を最大化する方法です。
今回の記事では、“使われないIT”になってしまう原因について解説いたしました。
ITでのお悩みは、ぜひBackpedalまでご相談ください。